「おねえちゃん、どこか行っちゃうの?」

私が答える前に、快人くんが「用事があるんだよ」と隼人くんに伝える。 すると、隼人くんは「え~っ」と眉を下げてものすごく不満そうな顔をして私を見た。

「じゃあ、僕も一緒に行くっ」

「はあ!? 隼人、わがままもいい加減に……」

「わがままじゃないもん! 僕、おねえちゃんと一緒に行く!」

「なっ……」

「ふ、ふたりとも落ち着いて……」

こういう時、どうすればよいのか分からないのが情けないと思いつつ、この空気が張り詰めて、ふたりとも何か些細なキッカケがあれば今すぐにでも泣き出してしまいそうな雰囲気には、慣れない。

そもそも、私は自分より小さな子供とまともに接するのは今日が初めてな気がする。

「僕、お姉ちゃんについてくから」

隼人くんは立ち上がって、私にぴったりとくっつく。 俯いた彼の顔を見ると、眉根をギュッと寄せて口がへの字に曲がってて、やっぱり今にも泣き出してしまいそうな顔だった。

ど、どうしよう……。 そう思いつつ、思わず田辺に視線を向けると目が合って、田辺は「……じゃあ」と口を開いた。

「来る? 一緒に」

「……えっ?」

快人くんがびっくりした後、少し遅れて、隼人くんも「……え?」と快人くんと私を交互に見ながら呟いた。

「快人も弟も、一緒に来たら?」

「え……どこに?」

「俺のじいちゃん家」

田辺はそう言いながら、さっき外で見た田辺のおじいちゃんの家がある方向を指さす。