生きていた時。 そんな言葉に、まだ胸がざわっと音を立てる。
「あ、あそこスーパーね」
スーパーの店内に入ってからも田辺の後ろについて歩いて、飲み物コーナーまで辿り着いて、少し悩んでレモンスカッシュを手に取る。
田辺はそれを見て「それ選ぶと思った」と笑った。
「……あのさ、変なこと聞くけど」
私は少し辺りを気にしながら言う。
「なに?」
「田辺は、喉乾かないの?」
「うん。 腹も減るっていう感覚もないかな」
「へえ……」
曖昧に返事をしながら、田辺の前で一人食事をするのも気が引けたので、お腹は空いているけれど食べ物は手に取らずレジに向かう。
「俺、外で待ってるね」
「うん」
セルフレジは故障中なのか規制されていたため、店員さんのいるレジの方に並ぶと、ランドセルを背負った男の子が先客でいた。
あれ、この子……。
「1,113円になります」
店員に言われ、男の子は財布の中から千円札を取り出す。 けれど「あれ」とどこか焦ったように言う。
財布を小さく振ってみている様子から、もしかすると小銭が足りなかったのかもしれないと思った。