迷惑だよなって言葉に、何だか萎縮してしまう。

そうだよね。

いくら多い名字とは言え、こんなに”佐藤さん”が集まったら、呼び方にも困るよ。


「ここ。」

佐藤君は、そんな私を他所に、指さしてきた。

「えっ……」

あの人は、目の前で縮こまっている私を、見つめた。

「ごめん……目の前にいたんだ。」

「すみません……」

「別に、謝る必要ないって!」

顔を上げた先には、キラキラと笑っている、あの人がいた。


「佐藤香恋さんよ。」

マネージャーさんが私を紹介すると、あの人はボールを回しながら、自己紹介してくれた。

「佐藤奏太です。よろしく。」


佐藤……奏太………

それは、私が一番知りたかった名前だった。