でもそういえば、わたしは木村くんのどこが好きなのだろう。

「ねえ美羽」

 木村くんのことを思い出すと、どうしてだかついてまわる広瀬くんとの思い出。未だに凄まじい雨音に混ざって、広瀬くんの声が届く。

「三月二十日、美羽の家へ迎え行っていい?」

 彼の誘いにオーケーも出していないのに、まるでその日、会うことが決定したかのような発言は、わたしの首を傾げさせた。

「ねえ広瀬くん、だからわたし、その日は無理だって」
「なんでよ」
「だってっ」

 だってその日は、木村くんに気持ちを告げる大切な日だから。なんて照れてしまうことは言えないから、建前の理由でも探していれば。

「木村へ誕生日プレゼント渡すのなんか、次の日でもいいじゃん」

 と、わたしの心を見透かしてきた広瀬くんに、驚かされた。
 ぱちくりと瞬きをして、率直に問う。

「どうしてわかったの」
「秘密」
「だ、誰かに聞いたの?」
「誰かに言ったの?」
「言ってない……」
「ははっ。じゃあ誰からも聞けないじゃんか」

 超能力者か魔法使いか。なんだか広瀬くんが、すごい人に思えた。

「じゃあ話は早いよね」

 狼狽(うろた)える自分を必死に隠し、わたしは冷静を保つ素振り。

「好きな人への誕生日プレゼントは、当日にあげたいって思うのが恋する乙女だから、三月二十日は絶対無理っ」

 がしかし、自分で発した「恋する乙女」というワードでわたしは自爆。カーッと顔が熱くなる。