木村くんとの思い出を回顧していたはずなのに、どうしてだか一緒に広瀬くんとの思い出も振り返ってしまった。
広瀬くんは内気なわたしにもよく話しかけてくれる、わりと仲良しの男の子。
「わあ、なにこの雨……」
その日の放課後は、天気予報にない豪雨に見舞われた。雲ひとつとしてなかった快晴の朝に、傘を持って登校してくる生徒はほぼゼロに近かった。
下校時を目掛けてぽつぽつと降り出した雨に皆が足早で帰る中、ただのスコールではないかと二の足を踏んだわたしは、昇降口で立ち尽くすばかり。
「走って駅まで行けるかな……」
試しにそっと軒下から手を出してみた。
「ひゃっ!」
すごく濡れた。
もうっと吐く白い溜め息。わたしは上履きのまま昇降口の傍にしゃがみ込み、グレーの空を見上げて呟く。
「走るしかないよねぇ、濡れるのやだけど……」
そう、嘆いていると。
「待ってれば?」
と、頭上から降ってきた馴染みの声に、顎を上げた。
「広瀬くん」
「雨やむの、待ってれば?」
広瀬くんの顔から順に下へ視線を落とすと、彼の足元もわたしと同じく上履き姿。そんな彼に尋ねる。
「広瀬くんも帰り損ねたの?」
すると彼の首は横に振られた。
「ううん。雨やむの待とうって思って。傘忘れたし」
「今日の大雨は天気予報士ですら予想外だから。傘持ってこられた人の方がすごいよ」
「あー。まあ、そうだな」
広瀬くんはそう言って、わたしの隣に腰を下ろす。
広瀬くんは内気なわたしにもよく話しかけてくれる、わりと仲良しの男の子。
「わあ、なにこの雨……」
その日の放課後は、天気予報にない豪雨に見舞われた。雲ひとつとしてなかった快晴の朝に、傘を持って登校してくる生徒はほぼゼロに近かった。
下校時を目掛けてぽつぽつと降り出した雨に皆が足早で帰る中、ただのスコールではないかと二の足を踏んだわたしは、昇降口で立ち尽くすばかり。
「走って駅まで行けるかな……」
試しにそっと軒下から手を出してみた。
「ひゃっ!」
すごく濡れた。
もうっと吐く白い溜め息。わたしは上履きのまま昇降口の傍にしゃがみ込み、グレーの空を見上げて呟く。
「走るしかないよねぇ、濡れるのやだけど……」
そう、嘆いていると。
「待ってれば?」
と、頭上から降ってきた馴染みの声に、顎を上げた。
「広瀬くん」
「雨やむの、待ってれば?」
広瀬くんの顔から順に下へ視線を落とすと、彼の足元もわたしと同じく上履き姿。そんな彼に尋ねる。
「広瀬くんも帰り損ねたの?」
すると彼の首は横に振られた。
「ううん。雨やむの待とうって思って。傘忘れたし」
「今日の大雨は天気予報士ですら予想外だから。傘持ってこられた人の方がすごいよ」
「あー。まあ、そうだな」
広瀬くんはそう言って、わたしの隣に腰を下ろす。