たった今、木村くんの口から出たその日付。偶然にも程がありすぎて、息を飲む。しかもわたしが広瀬くんからお誘いを受けるなんて、初めてのことだ。
「ええっと、その日はちょっと……」
カレンダーアプリを開いたままのスマートフォンに目を落とす。卒業式二日前の三月二十日は日曜日。この日を逃したら、わたしはもう二度と、木村くんへの告白ができないと思ってしまった。
「その日はちょっとごめん、用事があるの」
誕生日プレゼントを渡しに行って、想いを告げて。と、朧げにしかまだ計画は立てていないけれど、とりあえず他の予定は組み込みたくないって、それがわたしの本音。だから断った。けれど広瀬くんはそんなわたしとの距離を、一歩詰めてくる。
「お願い、美羽。三月二十日はどうしても予定を空けて欲しいんだ」
真剣な瞳。瞬ぎもせずに見つめられ、胸の辺りがざわついた。
「どうして?」
ドキドキと加速する鼓動に手をあてて、そう聞くが、広瀬くんは「どうしても」と言うばかり。
「どうしてその日なの?」
「どうしても」
「三月二十日になにかあるの?」
「とにかく、どうしても」
教室後方で行われるこのやり取りを、強引なデートの誘いだと感じたクラスメイトの男子たちが、ヒューヒューと口笛を吹き囃し立てる。それに居た堪れなくなったわたしは、「ごめん」と言って自席へ進んだ。
「と、とにかくその日は無理だからっ」
振り返らずに着席をしたから、その時の広瀬くんがどんな表情をしたのかはわからない。
「ええっと、その日はちょっと……」
カレンダーアプリを開いたままのスマートフォンに目を落とす。卒業式二日前の三月二十日は日曜日。この日を逃したら、わたしはもう二度と、木村くんへの告白ができないと思ってしまった。
「その日はちょっとごめん、用事があるの」
誕生日プレゼントを渡しに行って、想いを告げて。と、朧げにしかまだ計画は立てていないけれど、とりあえず他の予定は組み込みたくないって、それがわたしの本音。だから断った。けれど広瀬くんはそんなわたしとの距離を、一歩詰めてくる。
「お願い、美羽。三月二十日はどうしても予定を空けて欲しいんだ」
真剣な瞳。瞬ぎもせずに見つめられ、胸の辺りがざわついた。
「どうして?」
ドキドキと加速する鼓動に手をあてて、そう聞くが、広瀬くんは「どうしても」と言うばかり。
「どうしてその日なの?」
「どうしても」
「三月二十日になにかあるの?」
「とにかく、どうしても」
教室後方で行われるこのやり取りを、強引なデートの誘いだと感じたクラスメイトの男子たちが、ヒューヒューと口笛を吹き囃し立てる。それに居た堪れなくなったわたしは、「ごめん」と言って自席へ進んだ。
「と、とにかくその日は無理だからっ」
振り返らずに着席をしたから、その時の広瀬くんがどんな表情をしたのかはわからない。