「よかった、美羽……」

 辺りが混乱している中、どさくさに紛れた俺は、君の頭を頬に寄せた。

「まじでよかった、美羽が死なないで……」

 これで君は、木村の元へ行けてしまう。もしかすると告白なんかもするのかな。
 俺の君への恋心は、悲しいけれどここで卒業だ。

「美羽……」

 愛しき人の名を、縋るように呟く。すると君は、勢いよく頭を上げた。

「広瀬くんのことが好きですっ、わたしと付き合ってください!」

 今はけっこう大きな事故直後で、俺等は見知らぬ人々に囲まれている状況で。

「え……?」

 そんなシチュエーションにもかかわらず、どちらかと言えば内気な君がそんな大胆なことを言うなんて思ってもみないし、しかもその内容が、俺への好意の話だしで、俺は即座に慌てふためく。

「え、お、俺!?だって美羽が好きなの、木村だろ!?」

 木村をずっと追いかけている君だから、俺の気持ちにはとことん気付いてくれやしなくて、命の危険にだってさらされたのに。

「ううん、今のわたしは広瀬くんが好きなの!って言うかきっとだいぶ前から、好きだったと思う!」

 そう君がはっきりと言ってくれたから、俺は泣きべそをかくほど嬉しくなり、やっと素直になれたんだ。

「俺も、美羽が好き。ずっとずっと、好きだった」