男性から視線を車道に移すと、黒のワゴン車が目に入る。わたしより何倍も大きな図体のそれは、次々にガードレールをなぎ倒していた。
キキィーー!と鳴り喚くブレーキ音は、もう限界。「間に合わない!」という悲鳴に聞こえた。
こちらへと突っ込み向かってくるワゴン車を、ただ呆然とわたしは眺めていた。スローモーションにも思えたその刹那は、わたしに悔いる時間を与えてくれた。
意地なんか張らないで、好きな広瀬くんといればよかった。彼からの「好き」を待つのではなくて、自分から「好き」を伝えればよかった。
お願い、美羽。三月二十日はどうしても予定を空けて欲しいんだ。
一生懸命にわたしを誘ってくれていた、広瀬くんを思い出す。
三月二十日に迎え行く。
断れば、家まで来ようとしてくれた。
けれどいくら後悔しようが、時既に遅し。超特急の車を前に、わたしには成す術はない。
強張る身体、動けない。「その時」の覚悟を決めたわたしは、ぎゅうと目を瞑るだけ。
それなのに。
「美羽!」
幻聴のように、聞こえてきたんだ。
「美羽死ぬな!」
好きな人の、その声が。
広瀬くんの叫びはわたしの固まっていた身体を解凍すると、同時に瞼も上げて起こした。瞳に映る、精一杯わたしへ手を伸ばす彼。
「広瀬くんっ……」
もう無理だろうけれど。間に合わないだろうけれど。わたしもそんな彼に手を伸ばしたんだ。
キキィーー!と鳴り喚くブレーキ音は、もう限界。「間に合わない!」という悲鳴に聞こえた。
こちらへと突っ込み向かってくるワゴン車を、ただ呆然とわたしは眺めていた。スローモーションにも思えたその刹那は、わたしに悔いる時間を与えてくれた。
意地なんか張らないで、好きな広瀬くんといればよかった。彼からの「好き」を待つのではなくて、自分から「好き」を伝えればよかった。
お願い、美羽。三月二十日はどうしても予定を空けて欲しいんだ。
一生懸命にわたしを誘ってくれていた、広瀬くんを思い出す。
三月二十日に迎え行く。
断れば、家まで来ようとしてくれた。
けれどいくら後悔しようが、時既に遅し。超特急の車を前に、わたしには成す術はない。
強張る身体、動けない。「その時」の覚悟を決めたわたしは、ぎゅうと目を瞑るだけ。
それなのに。
「美羽!」
幻聴のように、聞こえてきたんだ。
「美羽死ぬな!」
好きな人の、その声が。
広瀬くんの叫びはわたしの固まっていた身体を解凍すると、同時に瞼も上げて起こした。瞳に映る、精一杯わたしへ手を伸ばす彼。
「広瀬くんっ……」
もう無理だろうけれど。間に合わないだろうけれど。わたしもそんな彼に手を伸ばしたんだ。