「広瀬くんは、わたしのことどう思ってる……?」

 今まで何度も思わせぶりな態度を取られて、その度に落ち込んだり腹が立ったりした。それはもしかすると、わたしが広瀬くんのことを好きだからこその反応で、彼から好きだと告げられれば、わたしは今日彼を選べるのかもしれない。

 それなのに。

「ただの友だちだよ。そこに恋愛感情は一切ない」

 だなんて広瀬くんが平然と言ってくるから、やっぱりわたしは前々から憧れている木村くんの元へと、足を走らせてしまうんだ。

 わたし不在の卒業式、黙祷や通夜。そんなの信じない。それよりも、今広瀬くんと一緒にいることが辛い。

「美羽っ!」

 立ち上がり、駆け出そうとしたわたしの腕を、広瀬くんは掴んで止めた。

「や、やめてっ」
「おい美羽っ!俺が話したこと、信じてくれてないのかよっ!木村んとこ行ったら、死ぬんだぞ!?」

 信じない、信じない。広瀬くんの言っていることは何も信じない。だってそうすれば、恋愛感情の話だって嘘で終わるでしょう?

「離して!わたしは木村くんのとこへ行く!」

 腹の底から声を出すと共に、力の限り、腕を振るった。ようやく抜け出せた、広瀬くんの手。わたしはその瞬間にスタートを切る。

「美羽!」

 背後で彼の声がした。流れ出ていきそうな涙を堪え、わたしは駅のホームへ向かい、そのまま電車に乗車した。