らちのあかないやり取りは、君が無理矢理終止符を打つ。

「も、もう帰るっ」

 それは雨がやむのと同時だった。広がる青空、優しい光。呆然とする君の隣で、俺は大きな伸びをした。

「よし、帰るかあっ」
「本当に、やんじゃった……」
「だから言ったろ?すぐやむって」
「う、うん」
「焦って帰らなくてよかったな」
「そう、だね」

 この天気の急変のように、未来をガラリと変えられやしないだろうか。溢れる光に期待を寄せ、(せつ)に願う。

「じゃあね美羽。また明日」

 けれど。

「年が明けてからの広瀬くん、ほっんと変っ」

 人通りの少ない東階段で、そう言われた時、俺はもう、どうしたらいいのかわからなくなった。

「もうわたしに構わないで、ほっといて!」

 生まれて初めて、人に思いきり拒絶された。それが愛しい君だなんて。

「じゃあ俺のこと好きになって、二十日は俺に誕生日プレゼントちょうだいよ」

 と、欲を出したのがいけなかったのだろうか。

「美羽。お願いだから、俺のこと好きになってよ……」

 と、口にしたのがいけなかった?

「俺は美羽を、諦めたくない」

 君の命を。そして本当は、この恋も。

 ガンガンと音を立て、君は階段を下って行く。呼び止めたい追いかけたい、なのに足が動かなかった。