「ええっと、その日はちょっと……」

 スマートフォンに目を落とす君。そこにはカレンダーが表示されている。

「その日はちょっとごめん、用事があるの」

 やはりそう簡単に、運命は変わらないのか。
 君との距離を一歩詰める。

「お願い、美羽。三月二十日はどうしても予定を空けて欲しいんだ」
「どうして?」

 木村の家へ行けば、君は死んでしまうから。とは言えない俺は、「どうしても」と言うばかり。

「どうしてその日なの?」
「どうしても」
「三月二十日になにかあるの?」
「とにかく、どうしても」

 教室後方で行われるこのやり取りを、強引なデートの誘いだと感じたクラスメイトの男子たちが、ヒューヒューと口笛を吹き囃し立てる。それに居た堪れなくなった君が、「ごめん」と言って自席へ進む。

「と、とにかくその日は無理だからっ」

 君の後ろ姿を目に入れながら、俺は絶望へと追い込まれていった。