「事故だって、死んだって。だから今日の卒業式は、途中で黙祷するってさ」

 卒業式の朝だった。君の不幸を知らされたのは。

「美羽ちゃん、可哀想だね。手には綺麗にラッピングされたプレゼントみたいなもの持ってたみたいだよ。誰かにあげに行く途中だったのかな」

 教室のそこかしこから聞こえる悲惨な君の情報に、俺は呼吸がし辛くなった。

「ほらほら、早く整列しなさい」

 ざわめく生徒たちの鈍足に痺れを切らせた担任が、パンパンと手を叩きながら注意を促す。

「卒業式は九時からだ。もう親御さんたちが待ってるぞ、急ぎなさい」

 世の中はなんて残酷なんだと感じたのは、仲間のひとりが亡くなったというのにもかかわらず、式典をきっちり遂行しようとするところ。気持ちが悪かった、吐き気を催しそうなほどに。

 パイプ椅子が並べられた体育館。君が座るはずだった場所は空席だ。校歌斉唱、証書授与、学校長の式辞など、着々とプログラムが進められていく中、俺はその空っぽな椅子を目に、君とのメモリーを思い出す。

 ねえ美羽、俺は君が好きだったんだよ。