三月二十日まで、あと二日。放課後のわたしはショッピングモールにいた。

「コップなら、木村くんももらって迷惑じゃないよね」

 雑貨屋でたまたま目についたのは、水色のマグカップ。絵柄は少なくシンプルな作りが、男の子向けだと思った。それをひとつカゴに入れ、店内を見渡せば。

「あ……」

 サッカーボールが端に描かれたハンカチが視界に入り、わたしの頭へ真っ先に浮かんだのは、広瀬くんの顔。
 手にとって、まじまじ見る。

「なんでよ……」

 もう引退してしまったけれど、サッカー部に所属していたのは木村くんも広瀬くんも同じなのに。

「どうして先に、広瀬くんが思い浮かぶの……?」

 わたしが好きなのは木村くんのはずで、今日は彼の誕生日プレゼントを買いに来た。

「こんなの、おかしいでしょ……」

 広瀬くんに無視されてから、もう二週間。心底悔しいけれど、わたしは彼のことを考える時間が増えてしまっている。