わたしの気持ちを知っているくせに、それは愚問すぎると思った。

「き、木村くんが好きだから」
「好きだから、誕生日当日にプレゼントあげたいの?」
「そ、そう」
「わざわざ休みの日に、出かけてまで?」

 絡む視線、逃げられない。わたしを見上げる彼との距離は二段ほど離れているけれど、その真剣な目つきに吸い込まれそうになる。
 そうだよ、とだいぶ強く言ったわたし。しかし広瀬くんはその口調の上をいく。

「じゃあ俺のこと好きになって、二十日は俺に誕生日プレゼントちょうだいよ」
「え」
「俺の誕生日も、三月二十日だから」

 広瀬くんから初めて誘われてからこの二ヶ月間、教えてはくれなかったその情報。

「広瀬くんも、その日誕生日なの?」
「うん。木村と同じ」

 今までこれだけしつこく誘ってきたのは、その日が広瀬くんの誕生日でもあったから、なのだろうか。
 誕生日にプレゼントが欲しいと、真面目に言われ、自惚れ癖のある胸が騒ぎ出す。鼓動がうるさい。

「美羽。お願いだから、俺のこと好きになってよ……」

 一段距離を縮め、広瀬くんはわたしを見つめてくる。

「ねえお願い、美羽。二十日は俺と一緒にいよう?」

 もう一段彼が近付けば、今にもこの心臓の音がバレてしまうのではないかと萎縮した。こんなにもドキドキしていれば、わたしは誰に恋をしているのよと、自分にツッコミだって入れたくなる。