それからの広瀬くんは毎日のように、わたしをしつこく誘ってきた。
 遊ぼう遊ぼう言うくせに、試しにプランを聞いてみたら「それは考えてない」とか言われる始末。彼はとことんわたしの心を掻き乱す。

 季節が進むと共にカウントダウンも進み、とうとう三月へ突入した。木村くんへの告白までも、卒業式までもあと一ヶ月をきり、わたしは落ち着かない日々を過ごす。

「まじで頼む!美羽の家教えてくれ!」

 そしてそれは広瀬くんも(しか)りなようで、木村くんの誕生日が近付くにつれ、彼の焦りも日毎に増していた。

「教えないってば。教えたら広瀬くん、うちに来ちゃうじゃん」
「なんだよ、俺が嫌なら潤とかに行かせるからっ」
「潤くんに来られても困るっ。そんなに話したことないし」
「じゃあ賢治っ」
「賢治くんともそんなにだよ」
「じゃあナベは!?」
「だーかーらーっ」

 そういうことではなくて。わたしとあなたはまず、約束もしていなくて。

「二十日はわたし、朝から出かけるのっ。木村くんちに、プレゼント届けに行くのっ」

 ここは校舎の中でも人通りの少ない東階段。だからわたしはいくらか声を張り上げた。むすっとした広瀬くんは言う。

「なんで」