ぽりぽりとこめかみを指でなぞり、俯いた。それならば何故わたしを誘うのよと、どうしてだか切なくなった。わたしたちふたりはクラスの中でもよく喋る仲の良い間柄なのだから、わたしの恋を応援してくれてもいいはずなのに。

 混乱し、うーんと唸る。ちらり、横目で広瀬くんを見ると、彼は何かを閃いたのか、手のひらにぽんっとグーを乗せていた。

「それかさ、今からでも木村じゃなくて、(じゅん)とかに恋すれば?」

 その発言は、切なさに拍車をかけるものだった。

「は、はい……?」
「あー、賢治(けんじ)でもいいかも。美羽のこと、可愛いって言ってたし。ナベもいい奴だからお勧めだなー」
「ちょっと、広瀬くん……?」
斎藤(さいとう)もかっこいいじゃん」

 次から次へと口にされる異性の名前。わたしの恋する相手はわたしが決めることなのに、木村くん以外を好きになって欲しい広瀬くんの気持ちが全くもってわからないし、ズキンと鳴る胸の奥は更に不思議だ。

「もしかして、木村くんには彼女でもいるの?」

 ひょっとして見込みのないわたしの恋への情けから、そんな発言が飛び出ているのかと思いそう問うが、どうやらそれは違ったようで、「いいや」とすぐに返された。