「あーあーマイクテスト。OKマイクテスト。『本日ハ晴天ニシテ波高シ』。聞こえますかー?」
「いやさっきのは何だお姉ちゃん」
幾人かが呼びかけに頷くのを確認した彼女は、隣の瑤太に小声で「マイクテストと言えばこれだと相場が決まっているんだよ」と返した。そして正面を向き、背筋を伸ばして胸を張る。
「はーいこんにちは!本日はお忙しい中お集り頂きましてありがとうございます!これより変質者及び妖魔除けアイテム『アイギス・シリーズ』の説明会を始めたいと思いまーす!」
「司さんってこんなキャラだっけ?」
なるべくテンションを高めにして声を張ったら、困惑したような社長の呟きが聞こえた。
「何分急な事でしたので、予め説明ができておらず申し訳ありませんでした。今回、『アイギス・シリーズ』ご希望の皆さんとは別に、まず『アイギス・シリーズ』を世に出す事にGOサインをくれた、弊社社長も来ております」
「孫江です」
席を示すと、最前列の社長は後ろを向いて女子生徒達に会釈した。つられたように、女子生徒達も会釈を返す。
「また『アイギス・シリーズ』の詳細を知りたいとの事で、菅凪先生とゼミの皆さんにもおいで頂いています。男子がここにいる事に困惑している方もおいでとは思いますが、アイテム研究の為だそうです」
菅凪教授らが座るスペースを示した手で、彼女は隣の瑤太を示した。
「なお、こちらにおります男子は、今回における私のアシスタント。幼稚園及び小・中・高と『似てない双子』と有名だった弟。至って人畜無害男子。瑤太と申します」
「双子!!?」
ほぼ全員の視線が、彼女と瑤太を行き来した。
「弟さんは、霊術士じゃないんだよね?」
「はい。ディオスクロイみたいなものです」
「…司さん。ディオ何とかって何?」
「お姉ちゃん。多分それじゃ一般の人はわからないって」
社長の問いかけと弟の言葉に、彼女は「しまった」と言いたげな表情になった。
「双子座のカストルとポルックスのようなものだと言えば、大体の方は馴染みがあると思います。かの双子は…諸説あるとは思いますが、片方が神通力持ちで、片方が普通の人間だったとの事なので」
社長を始め、ほぼ全員が「成程」といった顔になった。
「このメンバーで説明会を致します。なお、説明の途中でどうしても具合が悪くなる方もおいでかもしれません。その場合は、後ろをご覧下さい」
彼女が手で示した先。講堂の最後列の壁際。いつの間に佇んでいたのか。医師のような看護師のような、清潔感を覚える服装の2名が一礼した。
「医療用式神である、あちらの『パナケア・シリーズ』が皆さんを看護・あるいは保健室…ではなくて医務室にお連れします。ですので、遠慮なく仰って下さい」
「…お姉ちゃん、人型の式神なんて作れたっけ?」
「今回は特別仕様で人型にした」
こっそりと問いかける弟に、彼女は同じくこっそりと返した。何せ司家で機能する式神は全てが折り紙人形なので、当たり前と言えば当たり前の疑問である。
なお女子生徒達は驚いた顔を見せたが「本当に霊術士なんだね」と納得顔で囁き合っていた。
「では、体制の説明も致しましたので、本題に入ろうと思います」
彼女がさっと手を振ると、教壇に置かれていたストラップが、それぞれ全女子生徒の元へ飛んで行った。おお、わあ、と驚きの声をよそに、彼女は続ける。
「私個人の話で恐縮ですが、大学という場所自体が初めての上に、学校自体がジュラ紀ぶりですので、何かと至らない所もあるかとは思いますが、よろしくお願いします」
「いやジュラ紀ぶりって何だお姉ちゃん。つかお姉ちゃんは俺と一緒に卒業してんだから、そんなに時間経ってないだろ」
「じゃあカンブリア紀ぶり」
「…カンブリア紀っていつだっけ?」
「古生代の最初。まだ恐竜もいない」
「もっと遡ってんじゃねーか!」
「嫌だな。私なりのジョークだよ」
「わかりにくいんだよ!」
打てば響くような姉弟のやり取りに、講堂中がどっと湧いた。
「いやさっきのは何だお姉ちゃん」
幾人かが呼びかけに頷くのを確認した彼女は、隣の瑤太に小声で「マイクテストと言えばこれだと相場が決まっているんだよ」と返した。そして正面を向き、背筋を伸ばして胸を張る。
「はーいこんにちは!本日はお忙しい中お集り頂きましてありがとうございます!これより変質者及び妖魔除けアイテム『アイギス・シリーズ』の説明会を始めたいと思いまーす!」
「司さんってこんなキャラだっけ?」
なるべくテンションを高めにして声を張ったら、困惑したような社長の呟きが聞こえた。
「何分急な事でしたので、予め説明ができておらず申し訳ありませんでした。今回、『アイギス・シリーズ』ご希望の皆さんとは別に、まず『アイギス・シリーズ』を世に出す事にGOサインをくれた、弊社社長も来ております」
「孫江です」
席を示すと、最前列の社長は後ろを向いて女子生徒達に会釈した。つられたように、女子生徒達も会釈を返す。
「また『アイギス・シリーズ』の詳細を知りたいとの事で、菅凪先生とゼミの皆さんにもおいで頂いています。男子がここにいる事に困惑している方もおいでとは思いますが、アイテム研究の為だそうです」
菅凪教授らが座るスペースを示した手で、彼女は隣の瑤太を示した。
「なお、こちらにおります男子は、今回における私のアシスタント。幼稚園及び小・中・高と『似てない双子』と有名だった弟。至って人畜無害男子。瑤太と申します」
「双子!!?」
ほぼ全員の視線が、彼女と瑤太を行き来した。
「弟さんは、霊術士じゃないんだよね?」
「はい。ディオスクロイみたいなものです」
「…司さん。ディオ何とかって何?」
「お姉ちゃん。多分それじゃ一般の人はわからないって」
社長の問いかけと弟の言葉に、彼女は「しまった」と言いたげな表情になった。
「双子座のカストルとポルックスのようなものだと言えば、大体の方は馴染みがあると思います。かの双子は…諸説あるとは思いますが、片方が神通力持ちで、片方が普通の人間だったとの事なので」
社長を始め、ほぼ全員が「成程」といった顔になった。
「このメンバーで説明会を致します。なお、説明の途中でどうしても具合が悪くなる方もおいでかもしれません。その場合は、後ろをご覧下さい」
彼女が手で示した先。講堂の最後列の壁際。いつの間に佇んでいたのか。医師のような看護師のような、清潔感を覚える服装の2名が一礼した。
「医療用式神である、あちらの『パナケア・シリーズ』が皆さんを看護・あるいは保健室…ではなくて医務室にお連れします。ですので、遠慮なく仰って下さい」
「…お姉ちゃん、人型の式神なんて作れたっけ?」
「今回は特別仕様で人型にした」
こっそりと問いかける弟に、彼女は同じくこっそりと返した。何せ司家で機能する式神は全てが折り紙人形なので、当たり前と言えば当たり前の疑問である。
なお女子生徒達は驚いた顔を見せたが「本当に霊術士なんだね」と納得顔で囁き合っていた。
「では、体制の説明も致しましたので、本題に入ろうと思います」
彼女がさっと手を振ると、教壇に置かれていたストラップが、それぞれ全女子生徒の元へ飛んで行った。おお、わあ、と驚きの声をよそに、彼女は続ける。
「私個人の話で恐縮ですが、大学という場所自体が初めての上に、学校自体がジュラ紀ぶりですので、何かと至らない所もあるかとは思いますが、よろしくお願いします」
「いやジュラ紀ぶりって何だお姉ちゃん。つかお姉ちゃんは俺と一緒に卒業してんだから、そんなに時間経ってないだろ」
「じゃあカンブリア紀ぶり」
「…カンブリア紀っていつだっけ?」
「古生代の最初。まだ恐竜もいない」
「もっと遡ってんじゃねーか!」
「嫌だな。私なりのジョークだよ」
「わかりにくいんだよ!」
打てば響くような姉弟のやり取りに、講堂中がどっと湧いた。