上記の経緯もあり、瑠子と瑤太は「『あの』社長?」と反応したのである。
また彼女にとっては『自分がやった事を評価してもらえた』『評価に見合うだけの待遇を受けられるようになった』という点は誇りとすら思っている事柄なので、冒頭でも書いた通り、『高卒で働いている』事は、コンプレックスでも何でもない。何より、祖母の価値観の偏重ぶりを知っているので、何を言われようと聞く耳は最初から持ち合わせていない。鼻先で笑い飛ばせる。

この場を借りて、高卒で働く全ての人にも謝罪する。本当にごめんなさい。瓊子は考えが偏重な上に、極度の世間知らずなのだ。

また一応書いておくが、彼女は決して自分の祖母を馬鹿にしている訳ではない。『子供を怒るな来た道だ。年寄り嗤うな行く道だ』は真理だと捉えているからだ。単にひたすら、祖母は馬鹿だと思っているだけである。心から「何故あの大お祖母様から祖母さんみたいなのが生まれたのだろう」と疑問に思うくらいだ。

閑話休題。

「そういう訳で、瑤太の大学にお邪魔する事になった。それにあたって、瑤太。お母さん。『大学』を知っている2人に、一つ確認しておきたい事がある」
「何?」
「何だ?お姉ちゃん」

彼女は真顔で母と弟に問いかけた。

「『ゼミ』ってそもそも何する所なのかな…?」
「知らないで話していたのかよ!」