静寂な世界、青年が一人、無音に支配された城内を歩く
コンコンコン、城内に彼の足音が響き、まるでこの世界には自分一人だけ残された苦痛が青年を支配され仕方がない。
青年が立ち止まると無音になる。
一息吐き出し、中庭を見ると石化した使用人達、石化した城に植物、動物達
日常の一瞬を止められた石化の世界
動いてるのは、色があるのは、青年、ただ一人
青年は長き時と近寄りを使いて一人石化を解き、この城ルフレの主人にしてオフィール国の女王の元へ歩く

石化した城内で唯一石化されてない扉、女王の居る広間への扉
青年はゆっくりと開けると錆びれた音が聞こえ、己の石化されていた年月を感じさせられた。
あの日、王女スピカ様の成人の儀の最中だった。
王女から女王へ
その為この広間には騎士隊員、神子達、重役達が居り、その全てが石化されてる
青年は彼等をぶつからない様に歩み、王座へと向かう
王座へ上がる階段の手前で青年は立ち止まり、王座の方に見上げる
王座の前で向かう二人の少女、二人を守ろうとする十九人の青年と一人の女性の姿
その一瞬で止まってる。

彼女が国、オフィールを守る為に、力を使い、六人の青年も王女を守る為に力を使い、庇おうとして力を爆発し、さまざまな力が混じり合い、石化となし、城、ルフレは深い闇の眠りに落ちたのだ。

いつ寝覚めるか解らぬ王女と、ルフレ、オフィールの人々
恐らく王女、騎士団長、神子長、宰相が寝覚めない限り、ルフレの者達も起きる事はないだろう
(オフィール)は今どのような状態なのか、青年も解らない

しかし青年は(オフィール)の為、王女の為に石化を解き動き出す
彼はずっとそうして生きて来たのだから
青年は王座の前に跪く
「騎士団長様方、宰相様、そうして我等の王女様、どうかお目覚めを、私は皆様の為に動きましょう」
青年は深く一礼し、ゆっくりと立ち上がり、広間から立ち去る
だから青年は気付かない、王女の体が淡く光った事に
(―――――)

現在
アイビーは一人図書館へ向かい、いつもの様に自分の求める本を探してる
アイビーは両親を知らず、物心ついた時から施設で育った。
アイビーは時間を見付けると図書館へ行き、静かに過ごすのだ
そんなアイビーの姿を青年は見つめ、手にしてる本を強く掴む
(彼女が………オフィールの……)
青年はさまざまな葛藤の中、手にしてる本を、本棚におさめて、そっとその場から放れる
アイビーはさまざまな本を眺めて、青年が置いた本に目を止めて、手にかける
それを青年は見て涙を流す
(やはり彼女が、王女様の…………)

SPICA

古く色褪せた大きめな本
スピカは乙女座の一番星の名前
アイビーは乙女座に関する小説と考えて、席に座り、この「SPICA」を読む事にした。

そんなアイビーの姿を見て、青年はアイビーを見守る
これでいいんだ
全てはオフィールと王女の為
SPICAの本が淡く光る
この空間にはアイビーと青年しか居ない
しかしその事にアイビーは気付かない
王女と青年による結界の為、こちら(現世)の者に気付く者は居ない。