さすがに一緒にお風呂に入ろうとしてきた時には悲鳴を上げて、断固として浴室に入るのを拒んだが、基本的には蓮のわがままを拒絶出来ずにいた。
 
 私は最後の最後まで母親にはなりきれなかった。世話にするだけなら問題ない。しかし、私の最大の失態は――連のしつけをすることができなかったことだ。連とはたった数時間早く母親の胎内から出てきただけの人間だ。圧倒的に経験値が足りなかった。母親代わりをしようと決めた時、そのことに全く気づかなかった。
 
 結果だけでいえば、私のしたことは、ただ連を安寧に、安直に、安易に、日々を過ごす手助けをしただけのことだ。私が気づいた時には、もうこの意識を連に植え付けてしまっていて、周囲から敵意に満ち満ちた視線を向けられていた。
 
 どれだけ連に言い聞かせても、聞き入れてはくれない。私は間違えた。焦った。竹村の告白を保留にしているのも、蓮の問題が解決していないからだ。