それでも母は怒ったりしなかった。ただしゃがんで私と目線を合わせ、肩に手を置き、ニッコリと笑みを作って口を開いた。

 沙羅にいつも頑張らせてごめんね。でも、沙羅がしっかりしてくれているから私は安心していられるの。蓮のことは私より沙羅の方が分かってるしね。

 母が事故に会うだなんて想像さえせず、不機嫌のままの私は、ただ一つ頷き、学校へと向かってしまった。最後の最後まで、ごめんなさいとは言わなかった。