そんな私の苦労を知ってか知らずか、クラスの違う蓮はちょくちょく私の元を訪れては、ズカズカと私のテリトリーに踏み入ってくる。

 今日もそう。最後の授業が終わるや否や、教室の女子に視線を一挙に集めて――でもそのことに本人は気にもとめず――私の机に両手をついて身を乗り出してくる。

「沙羅、あのさ――」

 沙羅。私の名を口にする。あけすけに。呼び捨てで。

 今日、部活あるけど、お前どうする? 先に帰る?