「九郎。憐をあの場に連れて行け、麒麟とはまだ話す事がある。東姫、其方も寝所に戻れ」
 きびきびとした命令に、それぞれが答えて、蔵の前から大勢がはけていく。私も重治様に連れられるが、魂が抜けたように歩いて行った。自分の意志が働いていたのは、溢れ出る涙だけ。
 止めようとしても、止められない。涙は、想いは溢れる一方だった。
「さようなら、雷華様」