「これでも同じ事が言えますか。こんな悍ましい左側を見れば、覆い隠された物を剥がさなければ良かったと後悔致しますでしょう。これでお分かりになりましたでしょう?私は人ではない、げに醜き化け物だと」
 怒りや悲しみ、複雑な感情を胸に渦巻かせながら私は淡々と唾棄した。否、単に告げたのではない。
 今までにないほどの拒絶だ。隠し続けていた真実を明かすと言う事は、そう言う事だ。
「どこが化け物だと言うのだ、やはり美しいままではないか」
 朗らかに告げられた言葉に「はっ?!」と愕然とし、私は更にぐいと髪を横につけて「どこがですか!」と声を荒げる。
「いい加減になさいませ!ようご覧下さい、この悍ましい左側を!腫れあがっただけではない、この醜い左側を!失明して潰れているばかりか、ぎょろりと飛び出した左目を!毒々しい傷跡を!一生治る事がない、醜い左側を!」
 距離を詰めて声を荒げると、左髪を押さえていた手をぐいと強く引っ張られ、前につんのめる。
 そして私がハッと我に帰ると、私は大きくて温かな胸板の中に居た。ギュッと苦しくも、優しい力が私を包み込み、すぐ耳元で「もう言うな」と悲しげに囁く声が聞こえる。
 視界いっぱいに広がる、キラキラと美しい衣の黒色。背中にしっかりと感じる、大きくて温かな手。
 その力に惚けそうになったが、すぐにバチンと心の中で己を叩いて律し、「お止め下さい!」とぐーっと抗い、腕の中から逃げようと動く。だが逃がさないと言わんばかりに、胸の中に更に引き寄せられてしまった。
「ら、雷華様!」
「もう何も言うな。もう自分を罵るのは辞めろ、自分を呪い続けるのは辞めろ。それでも分からないなら、我が何度でも言ってやる。りんは化け物ではない、美しい人間の女子ぞ」
 囁く様に告げられるけれど、口調はとても力強いものだった。嘘偽りがないと、感じ取れる程の強さで、私は拒絶する手を弱めてしまう。
 その緩みを感じ取った雷華様は、力強い言葉を重ねた。