あぁ、ようやくあの麗しい目に、この私が映るのよ。これ程までに、喜びを感じた事はないわぁ。あの方も、ようやく人間の美しい娘を目に出来るのだから、嬉しいはずよ。
 ドキドキと高鳴る胸を押さえるが、口元からは喜びが溢れ出てしまい「ふふふ」と朗らかな笑みが零れてしまう。
 すると、からっと障子が開いた。雷華様が私の目に映り、雷華様の双眸にも美しい私の姿が映った。
「雷華様、お待ち申しておりましたわぁ」
 艶然として言いながらも、私は雷華様の眉目秀麗なお顔に釘付けになってしまう。
 やはり間近で見ると、遠目からよりも美しさを感じ取ってしまうわ。くらりと腰から砕け落ちそうになってしまうわね。
 私がとろんと惚けていると、「女」と目の前から、心地良い低音のお声がかかった。
 初めて声をかけられたと浮き足立ちそうになるのを押さえながら、私は笑顔で「東姫と申しますわ、雷華様」と艶やかに答える。
 だが、その時麗しいお顔が怪訝に歪み「どうでも良い」と、冷淡な声で唾棄されてしまった。
 私がその声に「えっ?」と戸惑っていると、「主に用はないのだ」と、どう言う訳か冷酷に言葉をぶつけられてしまう。
「りんはどこぞ?この姿ではあまり鼻が効かんのだ。ここはりんの部屋で、りんが我を待っているはずなのだ。一夜ぶりで早う会いたいのだが」
 この私が目の前に居ると言うのに、目に入らない様にきょろきょろとされ、私は愕然としてしまう。
 美しい私よりも、あんな汚らわしく醜い憐を探していると言うの?
「あ、あの。雷華様。ま、まさかではありますが、あの化け物、憐をお探しになられておりますの?ま、まさかですわよねぇ?」
「化け物、だと?」
 再び雷華様の目に私が映り、言葉の受け答えが出来たので、フフッと笑みが零れてしまう。「ええ!」と私は声高に答え、「憐は目も当てられぬ程の化け物ですわ」と、喜色を浮かべながら言葉を続けた。
「隠す様になってはいるものの、前髪に覆われた左側はげに醜い物なのですのよぉ。それはもう、目も当てられぬ程に!左目は失明しているばかりか、ぎょろっと出ている様に見えますのよ。気味が悪いでしょう?ですから、あんなの雷華様に釣り合いませんでしたわ。ですがご心配なく、雷華様。今までは見目が悪い化け物がお相手しておりましたが、これからはこの東姫が雷華様と過ごします故、もう」
「黙れ」