蕩けてしまう様な言葉をかけられ、私は嬉しい様な恥ずかしい様な、摩訶不思議な気持ちになってしまう。
 そして私は戦々恐々としながらも、美しい手に向かって手を伸ばした。
 するとパシッと早く手を掴まれ、力強く引き上げられる様にして、私は押し入れから引っ張り出された。
 私が押し入れから出ると、月光に晒され、醜い顔を彼に見られてしまう。だが、雷華様は東姫様達の様な反応をする事はなかった。
「これは殴られた、だけではないな?こんなにも惨い事をした奴がおるのか」
 悲しげに顔を歪めながらも、声は静かな怒りに震えている。私の腫れぼったい顔を見て、痛切に顔を歪めると。割れ物に触れる様に、私の赤々と腫れた右頬に慎重に且つ優しく触れ、真剣な眼差しで私を見つめた。
 私はその手にドキリとし、雷華様から目がそらせなくなる。「ら、雷華様」とぎこちなく彼の名前を呼ぶと、目の前の彼からは「すまない」と発せられた。
「え?」
 唐突に謝りの言葉を述べられ、私はぽかんとしてしまう。雷華様が謝る事なんて、何一つないと言うのに、何が「すまない」なのだろう。
 私が目の前でぽかんとしていると、雷華様のお顔は更に苦しい物になった。
「ら、雷華様?」
 恐る恐る尋ねてみると、雷華様は「すまない」ともう一度痛切に言った。
「我は治癒を施す術を持ち合わせておらぬのだ。すまん・・」
 痛いよなと悲しげに呟き、私の右頬を優しく撫でる。
「不甲斐ない。何が瑞獣、何が四神に匹敵する力だ。己が情けのうて仕方ない」
 歯がみしながら言うと、ご自分を更に責め立てる様に「まこと情けない」と唾棄した。
「雷華様、雷華様のせいではございませぬから。ご自分を責め立てないで下さいませ」
 右頬に優しく触れる手を包む様に手に触れながら告げると、目の前の雷華様は少し目を見開く。
 そしてすぐに目を細めて「敵わんな」と、安穏に呟いた。
「まこと、りんは優しき人間だな。我の贈り物が主の怪我の一因を担ったと言うのに、責め立てる事もせぬとは」
 苦笑を浮かべながら告げる彼に、私は「その様な事出来る訳がございませぬ」と答える。
「どうしたら雷華様を責め立てる事が出来ましょうか。この怪我は自分の愚かさが招いた物ですから、雷華様のせいなんて一つもございませぬ」