朗らかな声音で、あっけらかんとした口調。予想もしていなかった言葉に、私は「え?」と愕然としてしまう。
「と、取られたのですよ!?」
 こっちが抗議する様に言葉を発すると、やはり「構わん」とおおらかに返されてしまった。
「気にするな。先程も申したが、また別の物を贈ろう。別に、あれがなけなしの贈り物ではないのだぞ。あんな物、贈り物に相応しいかどうか考えあぐねていたのだ。うむ、良い機会だ。もっと良い物を主に贈れる事になるからの。気にするな」
「で、ですが」
 愕然としながら抗議を続けようとすると、「良いのだ」と力強く言葉を遮られる。
「だからな、もう会わぬなどと申してくれるなよ」
 優しい声音で告げられ、私の目からポロポロと涙が溢れて来た。雷華様の優しさに、強がっていた自分が溶かされ「はい」と言葉が零れる。
「では、ここを開けてくれぬか」
 朗らかに言われ、私は従順に扉を開けようとするが。ハッと思い留まった。
 今の自分は、いつも以上に醜い。髪は乱れ、殴られて顔は腫れ、涙で目も赤々と腫れている。衣で隠れているとは言えど、体だって痣だらけだ。見目が悪いにも程がある。
「出来ませぬ」
 震えながら答えると、またも「何故だ?」と尋ねられる。
「我はりんの顔が見たいのだぞ。我が怒っておると思っているのか?案ずるな、我はちっとも怒りを覚えておらぬぞ」
 放っておくと、またもとんちんかんな方向に話が進みそうだったので。私は、早めに「そうではなく」と遮った。
「いつも以上に見目が悪うございます。故に、雷華様に顔を見せるなどとても出来ませぬ」
 弱々しく答えると、突然スパンッと押し入れの扉が勢いよく開いた。押さえた手が甘かったと言うのもあるけれど、それにしてもの勢いで私は呆気にとられる。
 パチパチと目を瞬いていると。押し入れの前で、私の視線にあう様に雷華様が屈んでいらした。急いで扉を閉めようとするが、パシッとすぐに阻まれ、扉ががくんっとすぐに止まる。
「そこまで自分を卑下する必要はないぞ、りん。どんな顔であれ、心は美しいままなのだからな。りんが美しい事には変わらん」
 扉を押さえながら温柔に告げられると、雷華様は私の前に手を伸ばした。
「ようやく顔が見られたな。こうして直接会いたかったぞ」