信じられない気持ちで、そっと手をヒリヒリと痛む左側に当てると。指先からの刺激で更にズキズキッと強い痛みが迸った。
 それで夢ではなく、悲しい事に現実だと思い知る。
 じわじわと目から涙が生まれ、目の縁からほろっと滴りそうになるけれど。生まれる涙ですらも、ズキズキと刺さる様な痛みを発する。
 あんまりよ、こんなの。あんまりだわ。顔は女の命とも呼べるのに。こんな事、命が半分削られてしまったも同然じゃないの。こんなの酷すぎるわ。
 涙を流せない代わりに、奥歯で悲しみを磨り潰す様にグッと噛みしめる。
「お辛いでしょうが、下手人である伊予姫様と持ってきたおはると言う付き女房には処罰が下されました故。ご安心なさいませ、伊予姫様はここにはおりませぬよ」
 サラリと告げられた言葉に、噛みつく様に「待って?!」と声を荒げる。
「伊予姫様がやった?!そんな事、あるわけないわ!嘘よ!何かの間違いだわ!」
 痛みを堪えながらガバッと起き上がり、目の前の老師に強く訴えると。目の前の老師は目を瞬かせながら「え。い、いや」と、気圧され気味に言葉を零す。
「若様に、そう言った進言がありまして。実行犯であるおはると言う女房の進言と、東姫様達のお言葉から、伊予姫様が上がり。何も間違いはないかと」
 訥々と語られた言葉に、私は「東姫様?」と思い切り顔をしかめる。
「伊予姫姉様の訳がないわ。こんな事をするはずがないし、色々と平仄が合わないもの!」
 声を張り上げながら訴えると、薬師は「は、はぁ」と呆気にとられた。
「伊予姫姉様は、その罪をお認めにならなかったのでしょう?!」
「え、ええ。しかし何も言わなかった故。若様が」
 老師の言葉はもごもごと続いていたけれど、私の耳はその言葉は何も入らなかった。
 やはりそうよ、絶対に伊予姫姉様の仕業ではないわ。これは東姫様達が謀った事なのよ。
 おはるさんは、東姫様と関わりがあったに違いないわ。関わりが無かったとしても、弁の立つ東姫様の事よ。きっと甘い事を吐いて、おはるさんを上手く唆したんだわ。
 東姫様達の女房や、東姫様からの贈り物だと私が警戒して使わない。でも伊予姫様からと嘘を言わせれば、私が受け取り、使うからと踏んで。