酷く落胆してしまい、「こんな物!」と捨てたくなってくる。
 けれど伊予姫様は、私の物を見て、開口一番に「げに見事ですよ」と褒めてくれた。
「そ、そうでしょうか。こんな物、巾着袋とは呼べぬのでは・・・」
「そう嘆く事はありませぬ、りん姫。私だって、最初の頃はこうではありませんでしたし。これから少しずつ共にやっていけば、りん姫もこの様になりますよ」
 柔らかな笑みを称えながら、伊予姫様がポンポンと私の頭を優しく撫でる。
「こ、これからも共にやってくださいますか。伊予姫姉様」
 口元を綻ばせながらもじもじと尋ねると、伊予姫様は私の頭を撫でながら「勿論ですよ」と、嫋やかに答えてくれた。
 そして「さてと」と手を止め、私にニコリと優しい笑みを見せる。
「そろそろ夕餉の時間ですから、私はこれで失礼します・・が」
 忘れ物と言う様に手を伸ばすと、伊予姫様は私の拙い巾着袋を手にした。
「伊予姫姉様、それは私のですよ。こちらが、伊予姫姉様のにございまするよ!」
 サッと急いで伊予姫姉様の仕立てた巾着袋を手にし、渡そうとすると。
 伊予姫様は「私はこれで良いのです」と、悪戯っ子の様な笑みを見せた。その笑みを前に、私は「へっ?」と素っ頓狂な声を零してしまう。
「私の巾着袋はこれです。貴方の巾着袋が、その手にある方です」
「し、しかしそれはあまりにも拙い物で。伊予姫姉様が持つには、とても相応しくありませぬ」
 すると伊予姫様は私のおどおどとした言葉を遮り、「りん姫」と窘める様に私を呼んだ。その声に、私は「はい」と肩を竦めながら答える。
「互いの物を持つ事は、本物の姉妹らしくて良うございませぬか?」
 フフッと綻んだ口から告げられた言葉に、私はハッとして、すぐに「良き事にござまする!」と答えた。
 私の答えに、伊予姫様も「左様にございましょう?」と満足げな笑みになる。
「これを見ると、貴方が励ましてくれる様にも感じますし。そして小心者で情けのう己から、決別出来そうな気が致しますの」
「そんな事仰らないで下さいませ、伊予姫姉様。伊予姫姉様には情けのう事なぞありませぬ。伊予姫姉様は私の支えであり、光にございます」
 まくし立てる様に言うと、伊予姫様は少し呆気にとられてから、温柔な笑みを見せて「嬉しいですよ」と言った。