伊達家の次男、伊達小十郎政道様の側女のりんとしての始まりは、良い滑りだしなのかもしれないわ。なんて、密かに思ったけれど。
やはり心は晴れずに、どこか暗澹とした物を感じたままだった。それは小十郎様に対してなのか、この美しくも毒がある妻達のせいなのか。
まだ私には、よく分からない。分かる事は、目の前は依然暗澹としていると言う事だけだ。
・・・
そうして私が側室の一人として迎えられて、早くも二週間が経った。
二週間もすれば、他の妻達の人柄もよく分かってくる。正妻・藤の方様の冷ややかな恐ろしさ。小十郎様の前では美しく大人しいが、棘と毒を備えている東姫様と凪姫様。一番優しいけれど、上の三人に睨まれると竦んでしまう伊予姫様。
そして勿論、小十郎様の人となりも分かってきた。
初夜を終えてからは、私を側女の一人として扱ってくれるけれど。やはりこの方の目には、私達は映っていなかった。
映っているのは、ただ一人。兄君である藤次郎様だけ。
兄君・藤次郎様は出来るのに、自分には出来ないと言う強い劣等感を抱き、瞳の奥には嫉妬と妬みの炎が凄まじい程に燃え盛っている。
小十郎様は、全てにおいて優れている兄君を越えたいと言う強い想いしかない。故に妻達ですらも、兄に勝つ為の駒としか見ていないのだ。
私が初対面で感じ取った恐ろしさは、それだと分かった。
小十郎様は冷淡な凶暴性を秘めており、兄を越える為ならばどんな手段も取ってしまうお方だ、と。
少ししか感じなかった恐怖も、今ではよく感じ取ってしまい、肌が粟立ってしまう。穏やかな顔の奥に秘められた、その凶暴性に。優しく細められた目の中に燃える、妬みの炎に。
けれど私の目下の悩みは、小十郎様の秘められた恐ろしさにある訳ではない。勿論、それも悩みの種ではあるし、恐れを抱いているのだが。一番は他にある。
それは東姫様と凪姫様、そして藤の方様だ。私は彼女達に日々悩んでいる。
彼女達は、側室として迎え入れられた私がひどく気に食わず、徹底的に虐めてくるのだ。
やはり心は晴れずに、どこか暗澹とした物を感じたままだった。それは小十郎様に対してなのか、この美しくも毒がある妻達のせいなのか。
まだ私には、よく分からない。分かる事は、目の前は依然暗澹としていると言う事だけだ。
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そうして私が側室の一人として迎えられて、早くも二週間が経った。
二週間もすれば、他の妻達の人柄もよく分かってくる。正妻・藤の方様の冷ややかな恐ろしさ。小十郎様の前では美しく大人しいが、棘と毒を備えている東姫様と凪姫様。一番優しいけれど、上の三人に睨まれると竦んでしまう伊予姫様。
そして勿論、小十郎様の人となりも分かってきた。
初夜を終えてからは、私を側女の一人として扱ってくれるけれど。やはりこの方の目には、私達は映っていなかった。
映っているのは、ただ一人。兄君である藤次郎様だけ。
兄君・藤次郎様は出来るのに、自分には出来ないと言う強い劣等感を抱き、瞳の奥には嫉妬と妬みの炎が凄まじい程に燃え盛っている。
小十郎様は、全てにおいて優れている兄君を越えたいと言う強い想いしかない。故に妻達ですらも、兄に勝つ為の駒としか見ていないのだ。
私が初対面で感じ取った恐ろしさは、それだと分かった。
小十郎様は冷淡な凶暴性を秘めており、兄を越える為ならばどんな手段も取ってしまうお方だ、と。
少ししか感じなかった恐怖も、今ではよく感じ取ってしまい、肌が粟立ってしまう。穏やかな顔の奥に秘められた、その凶暴性に。優しく細められた目の中に燃える、妬みの炎に。
けれど私の目下の悩みは、小十郎様の秘められた恐ろしさにある訳ではない。勿論、それも悩みの種ではあるし、恐れを抱いているのだが。一番は他にある。
それは東姫様と凪姫様、そして藤の方様だ。私は彼女達に日々悩んでいる。
彼女達は、側室として迎え入れられた私がひどく気に食わず、徹底的に虐めてくるのだ。