思いも寄らなかった、ありがたい擁護に胸を打ち「はいっ」と、朗らかに答えるけれど。東姫からの目は更に冷ややかになり、悔しそうに扇を持つ手を震わせていた。
「では、この子も私達と同じ妻として迎えると言う事でよろしいですか?」
 小十郎様の横に居る女性がこの空気に怖じず、泰然と尋ねると。小十郎様は「うむ」と力強く答える。
「仲良うしてやってくれよ」
「畏まり申しました。若い女子が増え、私も大変嬉しゅうございます」
 小十郎様に向けて艶然と答えると、小十郎様は更に顔を綻ばせながら「うむうむ」と、満足げに頷いた。
「これで、ようやく兄者より妻の数も多くなったのぉ。義姉上に負けじ劣らずで、めんこい者ばかりじゃし。女の事に関しては、拙者の勝ちじゃな。のう、そうじゃろうて?」
 真しく話す小十郎様の言葉に、私は引っかかりを覚えてしまい、「うん?」と怪訝になってしまった。不敬だと思ったが、眉を顰められずにはいられなかった。
 女の事に関しては勝ちって、どういう事なの?兄者と言うのは、長子の伊達藤次郎政宗様の事よね。女の事に関しては勝ちって、藤次郎様と女性の事で競っているの?私達女は、兄君に勝つ為の飾りと言う事?違うわよね、そんな訳ないわよね?
 よく分からない状況に突然ぽんと放り投げられ、頭の中で疑問が次々と生まれるが。どうやらそれは私だけらしく、控えている女性は全員「左様にございますねぇ」「若様の勝ちにございましょう」と、にこやかに答えていた。
 彼女達は、飾りとして扱う事を良しとしているのね。そしてその彼女達の言葉で、更に機嫌を良くしている小十郎様がいる。
 こうなると、おかしいのは私と言う事なのよね・・・。
 武家の中では当たり前の事なのだわ、と考え直すけれど。やはり心中に広がる、この何とも言えない虚しさは拭いきれなかった。
「では、後はお前達で好きにしてくれ。拙者は父上にお目にかかってくるのでな」
 小十郎様が満足げに告げると、彼女達は揃って「はい。畏まり申しまする」と嫋やかに答え、深々と額ずく。
「行ってらっしゃいまし」
 並んで座っていた女性が代表して告げると、小十郎様は横に置いていた刀をむんずと掴んで立ち上がり、腰に差して、ずんずんとこちらに向かってくる。私は慌てて横に飛び退いて額ずき、小十郎様が通る道を空けた。