「で、では。私がこうなってしまうと、雷華様はご存じだったのですか?」
目を見開きながら尋ねると、雷華様は「ああ」と苦々しげに頷く。
「辛い思いをさせていると、分かっておったが。我は人間の姿にひょいとなれる訳では無いのでな。この姿で地下牢から救い出すのは、主を巻き込む恐れもあり、厳しいと踏んだのだ。故に、期を待つしかなかった。りんを外に出してくるまでな」
私はその考えに「成程」と相づちを打ち、だからすぐに雷華様が来てくれたのかと納得出来た。
「案の定。当主になれぬと分かると、りんを殺そうと動き、外に出した。そこを我が攫おうと思ったのだが。主から呼んでくれるとは思わなんだ。嬉しい予想外であったぞ」
口元を綻ばせながら言われると、私はなんだか恥ずかしくなってしまい「それは」と言葉をまごつかせながら、もじもじしてしまう。
雷華様は、そんな私に柔らかな笑みを零してから「だが」と重々しく口を開いた。
「やはり最後の最後まで、政宗は踏み切ろうとしなかったな。謀をしようとした時から、一度も謀に乗り気にならなかった。此度だって不承不承であり、苦渋の決断であっただろう。それほどに奴は弟を想っていた。こうなってしまった事に、一番胸を痛ませ、後悔の念に苛まれておるのは政宗だろうな」
言葉を紡ぎ終わると、雷華様も数多の人を仕切っている藤次郎様を静観した。
すると突然屋敷の中からギャアギャアと喚く、三人の女性の声が空気を震撼させる。その声で、穏やかになりつつあった空気が、再び苦しい物に変わっていった。
その声の方を見ると、藤の方様を筆頭に東姫様と凪姫様が藤次郎様の家臣達に囲まれて、歩いて来ていた。
「これは側女の争いですわよ、私は正室!何も存じ上げませぬ!」
「何よ、それ!貴方が私に命じたと言うのに!そう言う時だけ自分を守って、どういうつもりなのよ、貴方ぁ!!私は言われただけで、何も悪くないのよぉ!」
「私は何も手を出しませんでしたわ。東姫様ですの、東姫様と藤の方様ですのよ。故に、私に仕置きなど筋違いと言う物ですわ」
三者三様で喚き散らしているけれど、どれもこれも自分だけは助かろうとしている言い分。異口同音で、お互いに罪をなすりつけ合っていた。
藤次郎様、雷華様、そして私を見つけると。東姫様と凪姫様が、同時に「憐!」と猫なで声で私を呼んだ。
目を見開きながら尋ねると、雷華様は「ああ」と苦々しげに頷く。
「辛い思いをさせていると、分かっておったが。我は人間の姿にひょいとなれる訳では無いのでな。この姿で地下牢から救い出すのは、主を巻き込む恐れもあり、厳しいと踏んだのだ。故に、期を待つしかなかった。りんを外に出してくるまでな」
私はその考えに「成程」と相づちを打ち、だからすぐに雷華様が来てくれたのかと納得出来た。
「案の定。当主になれぬと分かると、りんを殺そうと動き、外に出した。そこを我が攫おうと思ったのだが。主から呼んでくれるとは思わなんだ。嬉しい予想外であったぞ」
口元を綻ばせながら言われると、私はなんだか恥ずかしくなってしまい「それは」と言葉をまごつかせながら、もじもじしてしまう。
雷華様は、そんな私に柔らかな笑みを零してから「だが」と重々しく口を開いた。
「やはり最後の最後まで、政宗は踏み切ろうとしなかったな。謀をしようとした時から、一度も謀に乗り気にならなかった。此度だって不承不承であり、苦渋の決断であっただろう。それほどに奴は弟を想っていた。こうなってしまった事に、一番胸を痛ませ、後悔の念に苛まれておるのは政宗だろうな」
言葉を紡ぎ終わると、雷華様も数多の人を仕切っている藤次郎様を静観した。
すると突然屋敷の中からギャアギャアと喚く、三人の女性の声が空気を震撼させる。その声で、穏やかになりつつあった空気が、再び苦しい物に変わっていった。
その声の方を見ると、藤の方様を筆頭に東姫様と凪姫様が藤次郎様の家臣達に囲まれて、歩いて来ていた。
「これは側女の争いですわよ、私は正室!何も存じ上げませぬ!」
「何よ、それ!貴方が私に命じたと言うのに!そう言う時だけ自分を守って、どういうつもりなのよ、貴方ぁ!!私は言われただけで、何も悪くないのよぉ!」
「私は何も手を出しませんでしたわ。東姫様ですの、東姫様と藤の方様ですのよ。故に、私に仕置きなど筋違いと言う物ですわ」
三者三様で喚き散らしているけれど、どれもこれも自分だけは助かろうとしている言い分。異口同音で、お互いに罪をなすりつけ合っていた。
藤次郎様、雷華様、そして私を見つけると。東姫様と凪姫様が、同時に「憐!」と猫なで声で私を呼んだ。