我慢できず、そのやわらかい唇へ口づけしようと顔を寄せ――・・・でもためらい、やむなくまぶたへ口付けを落とした。
夢夜は目をつぶる。その仕草でさえ、愛おしい。
「なんでもない・・・。案ずることはない」
獏ははにかみ、もういちど今度は額に口づけると、余裕なふりをして夢夜の体を引き剥がした。ほんとうは名残惜しくてたまらない。
――だがこれ以上は、きっとよくない。
ぽかんとする夢夜へ、ちゃんと渡した袍を着るように、と念押しすると、獏はさっさと背を押して自室から夢夜を追い出した。
わけもわからぬまま、夢夜は追い出された。「いきなりなんですかっ!?」と戸を叩く。
獏は無視すると、椅子にドサッと腰掛け、「はあ・・・」と頭痛をこらえて眉間を揉む。
明日は、長い一日になりそうだった。
自制できるだろうか、と悩み、でもそれですら楽しいと笑みがこみ上げる。どうやら自分は、この駆け引きも楽しんでいるようだ。
明け方、獏は静かに身支度をすると、私室を出た。
途中、夢夜の部屋が目にとまる。
――いい夢を見ているだろうか。
そっと戸に手を当て、気配を探れば、規則正しい寝息が聞こえてきた。
うすい壁を隔て、獏はむず痒い思いをこらえる。わずかな距離なのに、縮めるのはかなりの時間と忍耐が必要だ。
名残惜しく戸を撫でると、獏は朝日の差し込む廊下を進み、屋敷を出た。
どうか今日が、平穏に終わりますようにと、願いながら・・・・・・・・・。
夢夜は目をつぶる。その仕草でさえ、愛おしい。
「なんでもない・・・。案ずることはない」
獏ははにかみ、もういちど今度は額に口づけると、余裕なふりをして夢夜の体を引き剥がした。ほんとうは名残惜しくてたまらない。
――だがこれ以上は、きっとよくない。
ぽかんとする夢夜へ、ちゃんと渡した袍を着るように、と念押しすると、獏はさっさと背を押して自室から夢夜を追い出した。
わけもわからぬまま、夢夜は追い出された。「いきなりなんですかっ!?」と戸を叩く。
獏は無視すると、椅子にドサッと腰掛け、「はあ・・・」と頭痛をこらえて眉間を揉む。
明日は、長い一日になりそうだった。
自制できるだろうか、と悩み、でもそれですら楽しいと笑みがこみ上げる。どうやら自分は、この駆け引きも楽しんでいるようだ。
明け方、獏は静かに身支度をすると、私室を出た。
途中、夢夜の部屋が目にとまる。
――いい夢を見ているだろうか。
そっと戸に手を当て、気配を探れば、規則正しい寝息が聞こえてきた。
うすい壁を隔て、獏はむず痒い思いをこらえる。わずかな距離なのに、縮めるのはかなりの時間と忍耐が必要だ。
名残惜しく戸を撫でると、獏は朝日の差し込む廊下を進み、屋敷を出た。
どうか今日が、平穏に終わりますようにと、願いながら・・・・・・・・・。

