早朝から、夢夜は獏の私室に呼び出された。
いぶかしみながら戸を開けると、書斎の窓辺に獏は立っていた。
顔を背けたまま淡々と、
「見せたいものがある」
とだけ、言う。
「はあ」
「・・・いやなら、いい」
「い、行きますっ」
夢夜は慌てて玄関へ向かう。その肩を、獏は引き止めた。
「裸足で出歩くなと言ったはずだ」
そういえば、そうだった。――〈野生児〉の夢夜は苦笑いする。
「うぅ。ごめんなさい、まだ癖がぬけなくて」
「・・・それではいつか大怪我をするぞ」
獏は言いながら、机の引き出しを開けた。そこから豪華な木箱を取り出すと、夢夜の両手にぽんと手渡す。
「なんですか? これは」
夢夜は奇妙な虫でも飛び出してくるのかと、おそるおそる木箱を開ける。コトリと音をたてる蓋、箱の中におさめられていたのは、虫などではなかった。

