一方、場所は夢幻の世界から下界へ、夢夜が生まれ育った村へと移る。
生贄を途中で死亡させ、あろうことか逆らった村人を刺殺した村長は、当然のごとく、村人たちの反感を買っていた。
この村には、五人の村長がいる。互いに相談しあった上で、大事を決めていたのだ。独断は許されず、必ず多数決で決めると掟で決まっている。
咲紀の嫁入り――生贄の儀式の参加は、五人の村長により可決された事。替え玉をたてる事は秘密裏に行われたことだったのだ。
「加担した者は追放。娘可愛さに、主祭神の大蛇様をたばっかた貴様は、鞭打ち二百回だ」
四人の村長たちが下した決断は、非情なものだった。
村長と咲紀は、広場へ引きずり出された。咲紀は蔦(つた)で縛り上げられ、父親は地面に十の字に置かれた板に縛り付けられる。
咲紀の眼前で、鞭を手にした男が、ぱらりと束ねていた紐を解いた。
この鞭は、夢夜が振るわれていた竹製の笞(むち)とはわけが違う。先端が鉄でできており、強い力で当たれば、骨が砕ける恐ろしいものだ。つまり、咲紀の父親は事実上、処刑される。