飢餓寸前(きがすんぜん)で、よく笑っていられるものだ。
まんとう、と娘は復唱すると、見たことがない食べ物を興味深く嗅いだ。あやしいものは入ってなさそうだ。なにやら甘い香りが食欲をそそる。
「いただきます」
おそるおそる、一口かじり――・・・・・・、娘は大声を上げた。
男は思わず、水をこぼしそうになった。
「なんだ、そうぞうしい!」
「ふああっ!! おいしいっ、これはこの世の食べ物ですかっ!?」
娘は夢中でむしゃぶりついた。
饅頭の中には獅子肉が入っていた。やわらかい。見知らぬ植物と炒めてあるようだ。
この世に、こんなおいしいものがあったのか! 感無量。涙が出る。
「かみさまは、どこから降りてこられたのですか? これはかみさまが作られたのですか? こんな料理、見たこともたべたこともありません!」
「神ではないと何度言ったら・・・!」
彼は叱りつけようと娘を睨んだが、至福なひとときとあまりにもふぬけた顔をしていたので、怒るに怒れない。
男は、娘をじっくり観察した。
――痣(あざ)だらけの顔。汚れたうなじ。枯れ木のような腕。血がにじむ足・・・。
裸足でいつも歩き回っているようだ。血まみれだが、まったく気にとめる様子はない。
男は、しばし思案すると、さりげなくたずねる。
「そなたはいつも、そのような格好をしているのか?」
娘は少しわらった。
「・・・すみません、お目汚(めよご)しで。高価な着物はゆるされないのです」
娘は饅頭をかじりながら、ちゃっかりと母の分も確保する。本日分の食料確保だ。
男は言う。
「花の美しさはそれぞれ違う。気にすることはない」
「っ」
娘は胸が変な感じがした。なんだろう、胸がきゅうっと締め付けられる。
「花、ですか? わたしが?」
目を輝かせた。すると男は意地悪く笑った。
「どうした。雑草がよかったか?」
「・・・花でいいです」
娘はしゅんとした。
(なぁんだ。冗談かぁ)
彼が美しいからかもしれない。だから、なんでも魅力的に聞こえるのかも。
男とはそれきり、会話が途切れた。それでもふたりは一定の速度で休むことなく歩き続ける。やがて村の灯りがぽつりぽつりと木々の間から見え隠れし始めた。
「あの村に住んでいるのか」
男は言った。
娘は、憂(うれ)い顔ではにかんだ。
まんとう、と娘は復唱すると、見たことがない食べ物を興味深く嗅いだ。あやしいものは入ってなさそうだ。なにやら甘い香りが食欲をそそる。
「いただきます」
おそるおそる、一口かじり――・・・・・・、娘は大声を上げた。
男は思わず、水をこぼしそうになった。
「なんだ、そうぞうしい!」
「ふああっ!! おいしいっ、これはこの世の食べ物ですかっ!?」
娘は夢中でむしゃぶりついた。
饅頭の中には獅子肉が入っていた。やわらかい。見知らぬ植物と炒めてあるようだ。
この世に、こんなおいしいものがあったのか! 感無量。涙が出る。
「かみさまは、どこから降りてこられたのですか? これはかみさまが作られたのですか? こんな料理、見たこともたべたこともありません!」
「神ではないと何度言ったら・・・!」
彼は叱りつけようと娘を睨んだが、至福なひとときとあまりにもふぬけた顔をしていたので、怒るに怒れない。
男は、娘をじっくり観察した。
――痣(あざ)だらけの顔。汚れたうなじ。枯れ木のような腕。血がにじむ足・・・。
裸足でいつも歩き回っているようだ。血まみれだが、まったく気にとめる様子はない。
男は、しばし思案すると、さりげなくたずねる。
「そなたはいつも、そのような格好をしているのか?」
娘は少しわらった。
「・・・すみません、お目汚(めよご)しで。高価な着物はゆるされないのです」
娘は饅頭をかじりながら、ちゃっかりと母の分も確保する。本日分の食料確保だ。
男は言う。
「花の美しさはそれぞれ違う。気にすることはない」
「っ」
娘は胸が変な感じがした。なんだろう、胸がきゅうっと締め付けられる。
「花、ですか? わたしが?」
目を輝かせた。すると男は意地悪く笑った。
「どうした。雑草がよかったか?」
「・・・花でいいです」
娘はしゅんとした。
(なぁんだ。冗談かぁ)
彼が美しいからかもしれない。だから、なんでも魅力的に聞こえるのかも。
男とはそれきり、会話が途切れた。それでもふたりは一定の速度で休むことなく歩き続ける。やがて村の灯りがぽつりぽつりと木々の間から見え隠れし始めた。
「あの村に住んでいるのか」
男は言った。
娘は、憂(うれ)い顔ではにかんだ。

