獏は夢を見ていた。 誰よりも愛しい女性。生涯をかけて守り抜くと決めた女性。・・・同時に、すべてを諦(あきら)めることでしか救えなかった、もろい関係の結び目を。 娘の祖母を、獏は知っている。 いや、知っているどころか、愛していた。 祖母――譲葉(ゆずりは)は桃源郷(とうげんきょう)を治める天帝の娘。天女であり、かつての獏の〈恋人〉だったのだ。 獏はハッと目がさめた。