「旦那様に、知らせなければ・・・!」
老齢の妖狐は、忠義の一心で身体を引きずりながら向かう。心臓には小刀が刺さったままだ。這いつくばりながら進む彼女。おびただしい出血が草を染めている。
やがて狐牡丹は目的の場所――夢の庭につくと、自らの糸を引きちぎって異変を知らせた。
「おじょう・・・さま」
実の娘のようにかわいがっていた夢夜の無事を切に願う。

・・・それきり、狐牡丹は動かなくなった。