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皇妃が動き出すと、かぐやはあっという間に月の都に連れ戻された。
こちらと向こうでは時間の流れが若干違うらしい。かぐやが消え、連れ戻されるまでの日数はこちらではほんの七日ほどだったのだが、あちらの世界では七年の月日が経っていたそうだ。
宮中に連れ戻されたかぐやは毎日泣いて暮らしていた。
外に出ることはおろか、部屋から一歩も出されず軟禁状態。誰かと話すこともペンを持つことすらも許されない。もちろん十五との接触なんて厳禁だ。冷たく狭い部屋からは、すすり泣く声が絶えず響いていた。
今回の騒動で許婚との結婚は白紙に戻ったそうだが、そんなものでかぐやの心の傷は癒されない。
十五は人目を盗んで再び地上へと降り立った。毎晩月に祈りを捧げている、彼に会いに。
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「かぐや様」
部屋の外から聞こえた羽留の声に顔を上げる。
「十五様からこれを預かって参りました。お時間がある時にお読み下さい」
襖の隙間から一通の手紙が差し込まれた。
「誰かに見つかると厄介なので、私はこれにて失礼致します。……お辛いとは思いますが……かぐや様に笑顔が戻ることを祈っております」
足音が完全に遠ざかると、かぐやはよろよろと歩き出す。包み状には宛名も何もない。ジグザグに折られた紙を開くと、見覚えのある文字が並んでいた。
〝月の美しかったあの晩、不思議な湖であなたに出会えたこと、心から感謝しています。
あなたと過ごした五年という月日は、私にとって一生の運を使い果たしたのではないかというほど幸せな時間でした。
私のせいであなたが周りから責められていないか、今はそれだけが心配です。
私のことは心配いりません。こう見えて強い男ですからね。
……そうだ。あなたにもらった永遠の命を手に入れられるという薬、あれはこちらで処分させて頂きます。だって、あなたに会えないのなら意味ないですから。
永遠に二人で過ごそうと言ってくれたあなたの言葉、絶対に忘れません。死んでもあなたを想う私を、どうかお許しください。
それでは、お元気で。地上からあなたの幸せを願っています。〟
手紙を読み終えると、かぐやの両目からボロリと涙が零れ落ちた。
あれほど泣いたというのに涙は枯れることはないらしい。ひくひくと嗚咽が漏れ出し、とうとう子どものように声を上げて泣き出した。瞼が腫れ、声が枯れ果てても、涙が止まることはない。
かぐやはたった一人、狭い部屋で止まらない涙を流し続けた。