「今年も薄紫の水干がよく似合ってるぜ、聖仁」


にしし、と含み笑いした瑞祥さんに聖仁さんは苦い顔をした。


「毎年言ってるけど、この年でまた水干を着るとはね。そろそろ大人になりたいよ」

「まだ高等部を卒業しても専科が二年残ってるからな。ハタチまでは水干だろ!」


はあ、と肩を落とした聖仁さん。


聞けば、「水干」とよばれる和装は鎌倉から室町時代にかけて公武の元服前の子供の礼装として用いられていたのだとか。


確か初等部の松葉色の制服も水干をモデルに作られていたはずだ。

初等部の時からずっとこの役を任されていると聞いたから、初等部を卒業しても毎年一回は水干を着せられていたことになる。


聖仁さんからすれば、子供服を着せられている感覚と同じなのだろうか。