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江川麻衣様


電話もメールも出てくれないし、君がこれを読んでくれるという保障はまったくないけれど、一縷(いちる)の望みをかけて手紙を書きます。

まず、こないだはごめん。

君に別れを告げられて、僕はかなりショックを受けました。それと同時に、今までずっと君に甘えていたんだなと痛感しました。僕の我儘で君を振り回してしまって本当にごめん。

今さらこんなこと言っても意味ないかもしれないけど、僕はピアノの練習中も演奏会の時も、いつだって君の事を考えていたよ。君の喜ぶ顔を想像するだけで幸せな気持ちになれたから。

僕が今までピアノを続けてこれたのは君のおかげです。本当に感謝しています。ありがとう。

……実はこっちに来る前、君にプレゼントをしようと思って色々準備していたんだ。それがこないだようやく完成してね。今回のツアーが終わって帰国したら渡そうと思っていたんだけど、直接渡すことは難しそうだね。だから、僕たちが出会ったあの音楽室に、君へのプレゼントを隠すことにしました。懐かしいなぁ。あの時君は入学祝いで貰ったシャーペンを失くしたってピアノの前で慌てていたよね。名前を彫ってもらった大切な物だって。あの時の事は今でも覚えているよ。なんてったって一目惚れの瞬間だからね。

これは僕の人生を賭けた大博打だ。君がこの手紙を読んでくれるかは分からないけど、もし読んだならプレゼントを探してくれると嬉しい。最後まで我儘でごめんね。


じゃあ、体に気を付けて。願わくば、君がプレゼントを見つけてくれますように。



若宮和臣



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