「スカートじゃないですか」
「う、うん……」
由梨を迎えに来てくれた白井は目と口も丸くしている。由梨自身スカートなんて久し振りだから恥ずかしい。もう涼しい風が吹き出す頃だというのに足なんか出して張り切りすぎただろうか。そう思うと居たたまれない。伏し目がちになってショルダーバッグの胸元の紐を握って固まっていると、
「可愛いです」
言ってもらってとりあえずほっとする。
カーキ色の軽自動車の助手席に乗せてもらって、レジャーに出発した。国道を目的地の方向に向かえばふたりの職場の工場が見えてくる。
「でも、会社に行くのにスカートはやめてください」
「え、なんで?」
なんの気なしに尋ねたのに白井は口ごもる。横顔に注目していると、彼は横目に由梨の顔色を窺ってから言いにくそうにぼそぼそ話した。
「外階段の下から、ちょうど見えるから……」
「サイテー」
「オレは見たことないっすよ! 小田さんがよく言ってて」
本当にあのオトコはしょーもない。ぷくっと頬を膨らませて由梨は窓の方に顔を背ける。
「怒らないでください」
「怒ってないよ」
やや薄曇りで肌寒くはあるけれど、まあまあの行楽日和だ。機嫌を損ねるなんてもったいない。
「チキンの丸焼きの店にちゃんと連れてきますから」
「うん! 楽しみ!」
満面の笑顔で振り向くと、白井もほっとしたように笑った。
港に接した大型商業施設は平日のせいかそれほど込み合っていなかった。目的は観覧車に乗ることだったので、駐車場からまずは観覧車乗り場への階段を上がる。券売機で入場券を買い列に並んで五分ほどでゴンドラに乗り込めた。中は暑く感じて、由梨は羽織っていたカーディガンを脱いで半袖になった。
ゆっくりゆっくり上昇して視界も広がっていく。半島から半島に挟まれた湾が途切れて水平線が広がっていく。
「水平線って丸く見えるのだよね」
「そのはずっすね」
薄曇りの天候で、灰色がかった海と白っぽい空の境界はぼんやりしている。丸みを帯びているのか正直わからない。
目を細めて遠目に見てみようと少し背中を反らすと、肘に体温を感じた。向かいの座席にいたはずの白井が移動して隣にいる。由梨の腕を引っ張る。体を向けると顔が近い。由梨は思わず目を伏せてくちびるを引き結ぶ。
「う、うん……」
由梨を迎えに来てくれた白井は目と口も丸くしている。由梨自身スカートなんて久し振りだから恥ずかしい。もう涼しい風が吹き出す頃だというのに足なんか出して張り切りすぎただろうか。そう思うと居たたまれない。伏し目がちになってショルダーバッグの胸元の紐を握って固まっていると、
「可愛いです」
言ってもらってとりあえずほっとする。
カーキ色の軽自動車の助手席に乗せてもらって、レジャーに出発した。国道を目的地の方向に向かえばふたりの職場の工場が見えてくる。
「でも、会社に行くのにスカートはやめてください」
「え、なんで?」
なんの気なしに尋ねたのに白井は口ごもる。横顔に注目していると、彼は横目に由梨の顔色を窺ってから言いにくそうにぼそぼそ話した。
「外階段の下から、ちょうど見えるから……」
「サイテー」
「オレは見たことないっすよ! 小田さんがよく言ってて」
本当にあのオトコはしょーもない。ぷくっと頬を膨らませて由梨は窓の方に顔を背ける。
「怒らないでください」
「怒ってないよ」
やや薄曇りで肌寒くはあるけれど、まあまあの行楽日和だ。機嫌を損ねるなんてもったいない。
「チキンの丸焼きの店にちゃんと連れてきますから」
「うん! 楽しみ!」
満面の笑顔で振り向くと、白井もほっとしたように笑った。
港に接した大型商業施設は平日のせいかそれほど込み合っていなかった。目的は観覧車に乗ることだったので、駐車場からまずは観覧車乗り場への階段を上がる。券売機で入場券を買い列に並んで五分ほどでゴンドラに乗り込めた。中は暑く感じて、由梨は羽織っていたカーディガンを脱いで半袖になった。
ゆっくりゆっくり上昇して視界も広がっていく。半島から半島に挟まれた湾が途切れて水平線が広がっていく。
「水平線って丸く見えるのだよね」
「そのはずっすね」
薄曇りの天候で、灰色がかった海と白っぽい空の境界はぼんやりしている。丸みを帯びているのか正直わからない。
目を細めて遠目に見てみようと少し背中を反らすと、肘に体温を感じた。向かいの座席にいたはずの白井が移動して隣にいる。由梨の腕を引っ張る。体を向けると顔が近い。由梨は思わず目を伏せてくちびるを引き結ぶ。