そのままぐだぐだと三時間ほど居酒屋ですごし、絵里香のリクエストで二次会のカラオケに向かうことになった。さりげなくフェイドアウトしようとした由梨を絵里香は見逃さなかった。
「由梨ちゃんも行くの!」

 引きずっていかれたカラオケボックスで由梨は仕方なくソフトクリームをつっついた。ドリンクバーのソフトクリームサーバーの脇に置いてある小皿ではなくドリンクのグラスに山盛りに盛って部屋に戻ると、みんなにぎょっとされた。由梨にとってはこれが当たり前なのだが。そうかと思うと白井が真似をして、他の男の子たちもやり始めた。

 ソフトクリームを大きくすくって口に入れ、しばらくしてから温かいコーヒーを口に含む。美味しい。そうしながら皆が流行りの曲を歌うのを聞いていた。
「歌わないっすか?」
 回ってきたリモコンをそのまま隣の白井に渡すと顔を寄せて聞かれた。
「うん。溶けちゃうもん」
「そうっすね」

 白井もそのまま隣に回す。先ほどの居酒屋で一定のペースで飲み続けていた白井だったが、結婚式のときのように酔ってはいないようだ。そういえば白井は強いと小田が言っていた。

 その小田も珍しく今日は飲んでいた。探して見ると、隅の方で壁に寄りかかって目を閉じていた。大丈夫なのか。近づきたい誘惑にかられたけれど堪える。
 ほどなく睦子が隣に行って話しかけ、それに応えて手を振っていた。大丈夫みたいだ。

 そうやって時間をすごしていたらいつの間にやら人数が減っていた。一人、また一人と帰っていったようだ。しまった、逃げ遅れた。
 相変わらず元気な睦子と絵里香が今はほぼ交互に歌っている。このふたりはすごい。ボトルで入れた焼酎をウーロン茶で割って延々と飲み続けている。いや、白井もか。

「由梨ちゃんも歌って」
 気がつけば、由梨たち女子三人に黙々と飲み続ける白井と、ほぼ落ちていると思われる小田しか残っていない。この面子なら気兼ねはいらない。

「女子は体力あるっすね」
 始発の電車が走り始めるのを待って、朝の六時までカラオケに興じてしまった。初めての経験で由梨だって疲れてはいるが頭は妙に冴えていた。
「由梨ちゃんはたくさん食べるからだとして……」
「むっちゃんと絵里香ちゃんのはお酒がガソリンな感じだね」

 はは、と笑いながら駅前から大通りを白井とふたりで歩いた。電車に乗る三人とは駅で別れた。いざ起き上がってみると小田はすっきりした顔で、由梨はほっとした。