しつこく誘われたが断固として断った。すると睦子は由梨の班の絵里香を誘ったようだった。由梨と同時に入社したときには十九歳だった彼女も、二十歳の誕生日を迎えていた。
 おかげで難を逃れた由梨ではあったが、絵里香のことが心配にもなってしまう。睦子はなあなあなところがあるので信用できない。

 心配なあまり休み明け出勤してきた絵里香に合コンはどうだったかと訊いてしまった。絵里香は淡々と「ふつう」と答えた。なにしろイマドキの娘なのだ。マイペースで羨ましいと由梨は思う。

 ところが由梨の食事休憩に合わせて食堂代わりの会議室にやって来た睦子の話を聞いて、由梨は凍りついた。
「まったくさあ、タイヘンだったんだよ。あの子はしゃいじゃってすごくて。ダイスケくんてイケメンから離れなくてさ。あたし三次会まで付き合ったけど面倒見切れなくて。ダイスケくんが責任持って送っていきますっていうから彼のクルマに置いて帰ってきちゃった」

 何を言ってるのだ。責任を持って送るべきだったのは睦子だろうに。初対面の男を信用して酔っぱらってクルマに乗るなんてありえない。ネギをしょって鍋に入るようなものだ。由梨の常識ではそうだ。
 けれど絵里香は特に何かあったふうなことは言ってなかった。紳士的にきちんと送り届けてもらえたのだろうか。これまた由梨はそう思いたかったが。

「聞いてよ。あの子たちあの後ホテルに行ったんだって!」
 それはそうだろうと由梨は呆れて声も出なかった。怖い顔をしてぷりぷり怒ってる睦子の方が由梨には理解できない。お膳立てしたのは睦子だろうに。

「なんかズレてるよね、その人」
 話を聞いた美紀はやっぱりにやにや笑って言った。
「清純ぶってるのかな? カレシいないんだよね」
「うん。でも清純ていうのとは全然。男の子たちと嬉しそうにしゃべってるし」
「若いオトコが好きなんでしょ。複数にちやほやされて深いとこまで踏み込まず上辺だけ楽しくしてられればいいってことなんじゃないの」
 美紀の分析に由梨は思った。それは小田の持論ともきっと重なる。要するに、あの人たちは似た者同士というわけか。




 小田は資料製作がはかどらず毎日遅くまで残業していた。近々行われる大掛かりな会議で用いるものらしい。パソコンの操作にもそれほど長けていないようで、よく睦子に助けを求めていた。

 たまに目が合うと情けない目で何か訴えかけてくるふうだったけど、由梨に何ができるわけでもない。一度抗えずにパソコンデスクの脇まで様子を見にいくと、画像添付の処理をしているところだった。作業手順書のようだ。
「こういうの、検査のも作るから由梨ちゃんの作業中の写真撮らせてよ」
「絵里香ちゃんのがいいよ。若い子の方がさ」