戻って三人でおやつにイチゴを食べた。
 洗濯物の片づけを手伝ったり神棚の掃除を頼まれたりする。それから言われるままに夕食の下ごしらえをした。

「あんた料理してるの?」
「お惣菜か外食がほとんどかな」
「だろうね」
「その方が安上がりなんだよ」
 たまーにお手軽めんつゆ煮物を作ったりもするがそれは黙っておく。

 台所で椅子に座った祖母の指示通りに調味料を鍋に入れていく。煮物は母のそれより、祖母の味付けの方が格段に美味しいからこれは嬉しい。
 由梨が得意なのは炒め物だ。貰い物だというセリをごま油で炒めた。量がたくさんだったのでフライパンを揺すって全体を返す。祖母は驚いて上手上手と褒めてくれた。力技だから祖母にはもうできないのだろう。

「セリって、子どもの頃、田んぼに採りにいった気がする。毎年採ったよね? ワラビとかも」
「まわりは田んぼだらけだったからねえ」
 両親が離婚するまで住んでいた雇用促進住宅の裏手には、田んぼが広がっていた。今ではそこも巨大なスーパーマーケットになっているらしい。

「野菜が高いから採れればいいのに」
「由梨ちゃん、ここの畑で野菜やってもいいんだよ」
 広い庭の一角は祖母の趣味の畑になっている。足腰が弱くなってからは好きな土いじりもできなくなってしまったが。
 だから祖母は言うのだろうが、あわよくば由梨にも一緒に住んでほしいのだ。母は性格がきついし自由人だから祖母とは合わない部分がある。由梨に間に入ってほしいのだろう。
 気持ちはわかるが由梨は頷かない。由梨はひとりが良いのだ。

 夕食後のお茶の後、母がクルマで駅まで送ってくれた。由梨の自宅まで行ってくれると言ったけど断った。帰省ラッシュのUターンで国道は混んでいるだろうから。
「ありがとう。またね」
「はいよ」
 ぞんざいに言葉を投げ捨てる母に苦笑いしながらクルマのドアを閉める。ロータリーをまわって遠ざかっていく小さな車両を眺めながら、由梨はため息をついた。