待ち合わせの時間に待ち合わせ場所の会社の駐車場に来たのは、由梨と睦子と小田と白井だけだった。
「あの子たち来れないって今朝メールがきた。どうせふたりで示し合わせたんだろうね」
 睦子はぷりぷり怒っていたが、由梨はそんなことだろうと予想していた。ノリを合わせてくる輩に限ってドタキャンするものだ。

 そんなことより、由梨は並んで立っている白井と小田が持つレジ袋を凝視する。由梨は手ぶらで来てしまった、本当に良かったのだろうか?
 心配が顔に出たのか、小田が笑って袋の中身を見せてくれた。ペットボトルのお茶やジュースなどの飲料だ。
「四人の差し入れってことにしようか」
「ほんと? じゃあ、お金を……」
「いいよ」
「でも……」
「家から持ってきたんだ。うち酒屋だから」
「でも」

「あんたが出すなら全員出さなきゃならなくなる」
 ぼそっと白井がつぶやく。
「せっかく小田さんが言ってくれてるのに」
「そうだよ。小田くんにはまた今度お返しするってことで」
「うん。由梨ちゃん、そういうことで」
 睦子がかぶせてきて本人にもそう言われ、由梨はもごもご引き下がる。なんだか居たたまれない。

 小田と睦子が賑やかにしゃべり始めて白井と由梨は黙っている。
 大型連休で工場街は静かだ。広々とした駐車場はがらんとして話し声が響く。そんな中に黒い大型車が乗り込んできた。
「お待たせ」
 運転席から中年男性の丸い顔がのぞく。組み立て係の係長だ。背が低くがっしりした体形で首が短く強面のおじさんだが、話せば優しい。おまけに三人の子どものお父さんらしい。こうなると女子は警戒心を解くというものだ。

 迎えに来てくれた係長のクルマに乗せられて、山の中腹に位置するバーベキュー施設のある野外活動公園に向かった。
 駐車場のすぐ下の広場から、もわもわと煙が昇って賑やかだ。いちばん大きな声をあげて迎え入れてくれたのは、色黒の男性社員のようだった。作業着姿しか知らないから、私服だと誰が誰やら益々わからない。

 女子は睦子と由梨だけだから調理を手伝う覚悟をしていたのに、鉄板奉行が何人もいるらしくおじさんたちが張り切って仕切っている。わざわざそっちへ行くことはないようだ。