学校に着くと真っ先に屋上へ向かう。
 静まり返った校舎、夏の日差しがあれど電気をつけていないと薄暗く、肌寒い。夏休み前は賑わっていたが、貯まった埃がもうしばらく人々が来ていないと暗示する。

 今は夏休みなのに、私は毎日学校へ通っている。残り一週間、行きたいところも会いたい人もいない。
 それに、屋上に行けば……。

「先生」

 大きな背中。少し伸びた髪と、水色のシャツが風に揺れ、笑った横顔が私に気が付くと、おう、と手を挙げた。

 先生は幽霊が視えるらしい。きっと今も幽霊と笑いあっていた。

 端正な顔立ちの男の人、犬窓悠人。私はこの人に毎日会いに来ている。
 まだ二十代で、私の見立てでは三十代手前と言ったところ。生物教師で、二年B組の担任である。つまるところ、私の担任。
 人当たりもよく、男女共に人気のある先生。
 でも、そうだ、そういえば、最初私は彼が担任だと知って残念だったのを覚えている。幼稚な理由で卑屈な性格だから、みんなが好きなものは嫌い。

「また来たのか。お前も物好きな奴だな。あと一週間で地球は終わるってのに」
「その言葉そのまんま返します」
「俺は、ほら、こいつらの世話があるからさ」