靴を脱いで家の中に入ると、あれ、こんなんだったっけ、と思えるくらいにリビングは空っぽで、乱雑だった物が片付いた訳じゃないし、それどころかやっぱり物が多いのに、空っぽで、寂しげ、という表現が適切なくらい空虚。
 トイレも、脱衣所も、母の寝室も、台所もそんな感じなのだ。

 カーテンを開けると眩しい光が室内を満たし、舞った埃が残った空虚感を溶かしていく。

「片付けなきゃな……」

 母に代わって。それに、私が今までしなかったことをしなきゃいけない。
 さて、どこから手を付けたらいいものか。分からないながらに落ちた服を手に取り、不細工ながらに畳んで、缶や瓶を捨てて、食器を割りながらでも洗って、掃除機をする。その後に棚の上とかに埃が積もっていることに気付いてやり直し。

 そうしたら割と綺麗になり、充実感に包まれる。うん、やらなかった割に綺麗に出来た。
 自室はそんなに物がなかったから掃除という掃除をしてこなかっただけに、椅子に座ると疲労が押し寄せた。