なんてことない、まるで世間話のように彼女は、地球滅亡、と口にした。それに反応して「俺は死なねえ!」と立ち上がろうとした青年が勢いよく転ぶ。ふふふと笑い声が転がった。

「お、俺は聞いたんだ。人魚のうろこを飲めば不老不死になれるって」
「まあ」

 心底どうでも良さそうな、まあ、という声に、どきりとする。蔑みも入っていそうな声。

「俺は死なない。だってようやく人間に化けられるようになったんだ。これからもっと人間を騙して、負の感情から妖力を得るんだ」
「つまり、俺はでっかい男になるって?」

 志半ばの妖狐の言葉を遮るように人魚は食い気味に言い放った。さっきまでの彼女とは違って、背筋が凍る酷く冷たい声。

「人魚のうろこを飲んでも不老不死にはなれない」
「えっ」
「なれない。死は平等に訪れる。それも、きっとここにいるみんな同じ瞬間にね」

 そう、だ。息を飲み、明らかに狼狽えるこいるを横目に、私も重い現実を突きつけられた。そうだ……みんな、死ぬ。こんな財産も死んでしまう……。