「あれはあれで珍しいタイプだよな」
「修司って実はおとなしい子が好きなんじゃない?」
「そうなのかな」
「むっつりなんだよ、むっつり」
 郁子を挟んだ両隣で、達也と朱美が好き勝手に言っている。
 さすがの達也も修司のそういうところにはついて行けないらしい。

「このまま静かにしててくれりゃあいいけどな。もうすぐ卒業だからな」
 冬休みがすぎて三学期に入れば、あっという間に卒業だ。修司と郁子のつながりもそこで途切れる。
「郁子は短大だっけ?」
「うん。もう受験終わったよ」
「推薦か。さすが優等生」
 がしっと、郁子の頭に手を置きながら朱美は笑う。

「女子大生になっても遊んでよ」
 思わぬ言葉に郁子は目を見開く。
「え……」
「なにさ、その顔。まさかあんた、卒業したらさよならのつもりなの? 冷たーい」
 そのつもりだった。そうなるだろうと思っていた。今まではそうだったから。
 小学生のときに、クラスの女子たちとの付き合い方に疑問を感じて以来、郁子に友だちはいない。あぶれた者同士で班を組んだりすることはあっても、そういう子とはそのときだけの付き合いだ。クラスが変わればそれまでだし、今では名前だって覚えていない。

 子どもの頃から付き合いが続いているのは聡だけ。聡は郁子をわかっているしうっとうしくないから安心できる。
 そういう自分は冷たいのだと思いはしても、それで良いと思っていた。友だちなんかいらない。それなのに。

 固まったまま、ぱちぱち瞬きする郁子に朱美はあっけらかんと笑った。
「友だちは大事にしないとダメだよ。うちら友だちでしょ」
「う、うん……」
 朱美に友だちだと言われたことが嬉しい。嬉しいけどなんて言っていいのかわからない。
 俯く郁子の背中を朱美がぽんぽん叩く。

「なんにしろこのまま平和に卒業できるといいよなー」
「あんたは心配しすぎ」
「おまえら修司の無茶っぷりを知らないからよう」
 この後、ひたすら不安そうにぼやく達也自身がトラブルに巻き込まれることになるとは、誰も思わなかったのである。